子どもの矯正歯科治療の
開始時期について
子どもの矯正治療は、治療内容や時期に応じて1期治療と2期治療に分類されています。
1期治療(永久歯が生え始めたらスタート)
1期治療は、永久歯が生え始める6歳頃~永久歯が生えそろう12歳頃までに行います。目的は、子どもの顎の成長をコントロールし、永久歯がきれいに生えそろうように導くことです。顎の大きさやゆがみを整えることで、1期治療だけで歯並びが整う場合もあります。また、歯並びに悪影響を及ぼす癖の改善も期待できます。
- 5歳児、6歳児健診、学校の健診などで歯科医師に歯並びを指摘された
- 歯がおかしな位置に生えてきた
- 歯並びに悪影響を及ぼす指しゃぶりや口呼吸、頬杖、爪を噛むなどの癖がある
上記に該当する場合は、1期治療が必要な可能性があります。また、上記に当てはまらなくても、親御さまの視点で気になる点がある場合は、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。
子どものときから1期治療(小児矯正治療)をする必要性
永久歯が生えそろってから矯正治療を受ければよいのではないかと疑問を感じる方は多いのではないでしょうか。子どもの頃に1期治療を受けることには、さまざまなメリットがあります。ただし、デメリットもありますので、それぞれを比較したうえで1期治療を受けるべきかどうかを考えていただくことが大切です。
子どもの早期矯正治療のメリット
お子さまへの負担が少ない
1期治療は、顎の成長を利用して将来的に永久歯がきれいに並ぶように促す治療です。成長を利用することで、大人の矯正よりも少ない痛みで治療を受けていただけます。また、自宅にいる時間帯や就寝時に装着する矯正装置を使用するため、お子さまに大きな精神的な負担を与えることもありません。
歯並びのトラブルを未然に防げる
1期治療で顎の成長をコントロールすると、上下の顎のどちらかが過度な成長、あるいは成長が悪いことによって生じる出っ歯や受け口のリスクを抑えられます。また、歯並びに悪影響を及ぼす指しゃぶりや口呼吸、頬杖、爪を噛むなどの癖の改善も期待できます。
2期治療で非抜歯矯正ができる可能性が高まる
非抜歯矯正とは、抜歯をせずに矯正装置で歯並びを整えることです。2期治療では、大人の矯正と同じく矯正装置を用いて歯並びを整えます。このとき、歯を動かす先のスペースを確保するために抜歯する場合があります。1期治療で顎の成長をコントロールし、十分なスペースを確保することで、抜歯をせずに矯正できる可能性が高まります。
2期治療が不要になるか治療期間を短縮できる
1期治療で顎の成長をコントロールし、大きさや形を整えることで、2期治療が不要になる可能性があります。あるいは、2期治療の治療期間の短縮が期待できます。
顎や歯並びのトラブルを未然に防げる可能性が高まる
歯並びに悪影響を及ぼす癖の改善が期待できるため、顎や歯並びのトラブルを未然に防げる可能性が高まります。
2期治療(永久歯が生え揃い、成人と同じ環境)
2期治療は、永久歯が生えそろってから行う矯正治療です。永久歯は、早くて小学校高学年、平均では中学生~高校生に生えそろいます。2期治療の目的は、大人の矯正と同じく、歯並び・噛み合わせを改善することです。大人の矯正と同様に、ワイヤーやマウスピースなどの矯正装置を使用します。
1期治療を受けても永久歯がきれいに並ばなかった、1期治療を受けるタイミングを逃してしまったなどの場合に受けていただく治療です。ただし、1期治療で歯並びがある程度整って満足できたため、2期治療を受けないという方もいらっしゃいます。
子どもの歯並びの治療期間や費用の目安
1期治療で使用する矯正装置と費用の目安
1期治療の費用の目安はお子さまの発育や噛み合わせの状況などで異なりますが、だいたい10~50万円程度です。使用する矯正装置の交換や調整の回数が多い、治療の難易度が高い、治療期間が長いといった場合は、費用が高くなります。
治療期間の目安は1~3年程度ですが、経過観察や継続的な治療を希望されるケース、重度の不正咬合の場合などは4年以上かかることもあります。矯正装置の種類は次のとおりです。
※表をスクロールしてご覧いただけます。
装置の名称 | 効果 | 装着時間の 目安 |
取り外しの 可否 |
---|---|---|---|
床矯正(しょうきょうせい)、 拡大床(かくだいしょう) |
顎の骨の成長のサポート | 1日14時間 以上 |
可 |
T4K・ムーシールド など |
お口周りの筋機能のトレーニング | 1日10時間 以上 |
可 |
インビザラインファースト | 顎の大きさを広げて歯並びを整える | 1日20時間 以上 |
可 |
バイオネーター | 下顎の成長のサポート | 1日10時間 以上 |
可 |
リップバンパー | 下唇や頬による過剰な圧力の排除 | 1日10時間 以上 |
可 |
フェイシャルマスク | 受け口の改善 | 1日10時間 以上 |
可 |
ヘッドギア | 上顎の成長を抑制し、出っ歯を改善する | 1日10時間 以上 |
可 |
リンガルアーチ | 受け口の改善や歯列のアーチの拡大 | - | 不可 |
急速拡大装置 | 上顎の歯列のアーチの拡大。3~4週間で6.0~8.0mmほど広げる。 | - | 不可 |
クワドヘリックス | 歯列のアーチを拡大しつつ奥歯の傾きやねじれを修正できる。3~6ヶ月で3.0~6.0mmほど広げる。 | - | 不可 |
タングガード | 開咬の治療に使われることが多い | - | 不可 |
2×4(ツーバイフォー) | ワイヤーとマルチブラケットを使用し、歯並びを整える | - | 不可 |
2期治療で使用する矯正装置と費用の目安
2期治療にかかる費用の目安は、歯並びの状態によって異なりますが、だいたい20万~100万円程度です。不正咬合が重度であればあるほどに治療費も高額になります。なお、2期治療のみ受ける場合は、大人の矯正と同じく35万~150万円程度かかります。治療期間の目安は1~3年程度です。歯が理想的な位置に動いた後は、歯の後戻りを防ぐために保定装置を装着します。保定期間は矯正期間とほぼ同じです。
2期治療で使用する矯正装置は次のとおりです。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、歯に取り付けたブラケットにワイヤーを通し、ワイヤーが元に戻ろうとする力で歯を動かす矯正治療です。適用できる症例が非常に多いため、主に難症例を中心に使用されています。歯の表側に矯正装置を装着する場合は矯正装置が目立ちますが、歯の裏側に取り付ければ目立ちません。また、目立ちにくい色のワイヤーを使用する方法もあります。費用は、矯正装置の種類や表側と裏側のどちらに装着するかで異なりますが、大体60万~150万円が目安です。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、複数枚のマウスピースを定期的に交換しながら段階的に歯並びを整える矯正治療です。取り外し可能なため、普段どおりに食事や歯磨きができます。その一方で、適用できる症例がワイヤー矯正よりも少ないというデメリットがあります。費用は、使用するマウスピースの種類やブランド、適用範囲、症状の程度などで異なりますが、10万~100万円程度が目安です。